転職への新たなルート 別の会社で「お試し勤務」

改革 革命 働き方改革

はじめに

別の会社で「お試し勤務」を経験して、相性を確認したうえで転職に至るケースが増えています。

転職では入社後に、予期せぬギャップに気付くケースが起こりやすいものです。というか、間違いなくギャップはあります。無い人は居ません。

そうした事態を防ぐうえで効果を期待できる転職の新たなスタイルが

「副業(複業)」

「業務委託」

などを経ての転職です。

転職においては、しっかり企業研究をしても、面接でじっくり話し合ったとしても、入社後にギャップを感じるケースが間違いなくあります。

担当業務の内容、仕事の進め方、人間関係、風土など、ギャップの種類は様々。私も大いに感じています。

「こんなはずじゃなかった」と気付き、「これなら前の会社にいたほうがよかった」と後悔するような状況も起こり得ます。

時間をかけてでもなじめればいいのですが、短期間で辞めて再度転職することになり、本人と企業双方が時間を無駄にしてしまうこともあります。

今、「副業(複業)」の解禁に動く企業が増えています。

2019年、トヨタ自動車の豊田章男社長が、「終身雇用を守っていくのは難しい」と発言したのは象徴的な出来事で記憶に新しいです。

「キャリアは個人が自分自身でつくるもの」という考え方が、企業側にも個人側にも広がっています。

そうした背景から、「副業(複業)」という手段により、1社に縛られることなく、さまざまな職場やプロジェクトの体験ができるようになりました。

企業側としても、本当に活躍してくれるかどうかわからない人を最初から正社員として雇用するのはリスクが大きいもの。

まだ資金力に乏しいスタートアップ企業であればなおさらです。

そこで、まずは「副業(複業)」「業務委託」という形でサポートに入ってもらい、自社に必要な人材であることを確信したうえで正式入社を打診するということができるしくみはメリットが大きいわけです。

企業のご紹介

「副業(複業)」「業務委託」を経ての採用を多数実現している企業の例をご紹介しましょう。

「社会人インターン制度」を設けている「POL(ポル)」です。

POLは2016年に創業したスタートアップ企業。理系学生に特化したスカウト型就活サービス「LabBase」を運営しており、すでにトップ大学の理系院生の4人に1人が利用するサービスへと成長させています。

同社は創業時から「正社員」をそろえていたわけではなく、必要なスキルを持つ人材が、その都度、副業や業務委託などのスタイルで参画してきました。

その中から、正社員になることを希望するメンバーが現れ、約4年で10人弱が正社員となっています。

その流れから「社会人インターン」を制度化。現在、社員45人、社会人インターンおよび業務委託メンバー約20人、学生インターン約50人という組織で運営しています。

POLの社会人インターンについて、People eXperience部の責任者・藪大毅さんへのインタビュー記事をご紹介しましょう。

社会人インターンで見極めたい「カルチャーフィット」

当社のあらゆる部門・業務で社会人インターンの方々に携わっていただいていますが、一例をお話しします。

私は以前は営業を担当していて、1年ほど前に営業部内にマーケティング部を設けるプロジェクトが持ち上がりました。

そこで私が前職でつながりのあった、マーケティングに強い友人たちに声をかけたところ、社会人インターンとしてサポートに入ってくれたんです。

彼らは企業に在籍していて、POLの業務を行うのは平日の終業後や土日。こうしてマーケティング部門は社会人インターンだけで立ち上げたんです。

この事例のように、社会人インターンの方々には「緊急ではないが、経営にとっての重要課題」に関わっていただいています。

当社には「業務委託」のメンバーもいて、働き方は一見似ているんですが、業務委託の方には日常の運営に必要な「タスク」に近い仕事をお任せしていますので、そこに違いがあります。

社会人インターンの方々も、必ずしも当社への転職を前提としてはいません。

彼らが本業を持ちながらPOLの事業に参画する理由は大きく2つあります。

1つは「POLのビジョンへの共感」、1つは「スキルアップです」。

20代半ばから後半の人たちなどは、すでに自分のコアスキルを身に付けていますが、組織の枠内でしか新たなスキルを磨けないことに危機感を抱いている。

そこでPOLで自分のキャリアを役立てつつ、自社では得られない知見やスキルを得たい、ということです。

なお、「スキルアップ」が主目的であっても、多少なりとも「ビジョンへの共感」があるところは共通していますね。

正社員となった人の理由

インターンを経て正社員となった方の理由の決め手は、居心地の良さ。組織のカルチャーです。

当社のカルチャーは独自性が強いので、社会人インターンとして入っても、「合わない」と感じて辞めていく人ももちろんいます。

社会人インターンを経て転職する最大のメリットは、

「カルチャーフィットを完全に見極められる」

という点にあると思います。

そして採用する側から見ると、「経歴」だけでは計れない能力を知ることができます。

私たちは事業スピードが速いスタートアップだけに、「柔軟性」や「吸収力」などを重視します。

その点、本業を持つ社会人インターンの場合、副業先の課題や業務のキャッチアップ、思考、アウトプット……という流れを短時間・短期サイクルでこなさなければなりません。

そのためには、柔軟性や吸収力、さらにはメンタルのタフさ、ストレス耐性なども必要です。

そうした要素を持ち合わせている人材かどうかがわかるという点でも、「社会人インターンを経て採用」という流れは有意義だと感じています。

業務以外での働きかけ

カルチャーフィット度合いを判断できるようにするために、業務以外では、毎週金曜に行っている『BUMP FRIDAY』は、当社のカルチャーへの理解を深める機会になっていると思います。

これは各部署がその週にあった「良かった出来事」を発表してシェアし、お互いに褒めたたえ合う場。この場での聞き手側の盛り上げ方がすごいので、はじめていらっしゃった方はよく驚かれます。

発表者だけでなくみんなで会を作っている感じです。

会社の全体像をつかむこともでき、そこからカルチャーを感じてもらえると思います。

実際に、社会人インターンを経てPOLに入社したのが星千桂子さんです。

星さんは大手生活用品メーカーでのバックオフィス、人材サービス企業の営業、ネット系スタートアップ企業の役員、ネット企業のITエンジニアなどを経て、2018年にPOLに参画。3カ月の社会人インターンを経て正式入社しました。

営業、事業企画を経験して、エンジニアに転身

次はその星さんへのインタビュー記事です。

もともと、一つのことを極めるよりも、いろいろなことに興味を持つタイプなんです。

しかも、「知識」だけでは物足りず、自分自身でやってみないと気が済まない(笑)。

その時々で、自分に必要な経験・スキルは何かと考えた結果、営業、事業企画、エンジニアと転身を繰り返してきました。

ビジネスサイドを経てエンジニアをしているという私の経歴に興味を持ってもらえたようで、代表の加茂倫明さんから「一度、会いませんか」とダイレクトメールをいただいたんです。

お話ししてみると、熱量と勢いに魅力を感じ、「面白そうだな」と。

転職するつもりはなかったので、社会人インターンとしてお手伝いすることになりました。

実は当時、エンジニアの仕事にもどかしさも感じていたんです。

前職でネット事業の立ち上げを行ったとき、「エンジニアと対話するためには仕事を理解しなければならない」と考え、エンジニアの経験を積むために転職しました。

でも、その会社のエンジニアの仕事は開発スパンが長く、すぐに成果が表れるものではなかったんです。

私の中では、「組織に貢献している」という実感を持てることが重要。

だから、現職でエンジニアのスキルを磨き続けながら、POLで新規事業企画に携わることで「貢献実感」を味わいたいと思ったんですよね。

頭の切り替えは難しかったです。だから、「POLの仕事はこの時間まで」としっかり線引きするようにスケジューリングをしていました。

一緒に働いているメンバーたちが、すごく好きになってしまったのが正社員になった大きな理由。

「この人たちともっと働きたい」と思ったのが一番大きいですね。

前の会社で、エンジニアとしてもっとできたとは思います。でも「こちらのほうが楽しそう!」を我慢できなかった感じです。

POLの事例からも、入社前にカルチャーフィットを確認することは、転職者にとっても求人企業側にとってもメリットが大きいといえるでしょう。

転職を検討する際、まず「副業(複業)」から興味のある企業に関わってみるというスタイルは、今後も広がっていきそうです。

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