2020年 早期退職はどうなる?

転職 退職

はじめに

日本はすでに「大・早期退職」時代と言ってもいいでしょう。

東京商工リサーチが発表した調査によると、2019年に早期・希望退職を実施する上場企業が直近6年で最多を記録。

今年2020年には、業績が堅調な業界大手も「構造改革」などの名目ですでに実施を明らかにしています。

今後日本はどうなっていくのでしょうか。

Aさんの事例

「まさか、45歳の私が早期退職の対象になるなんて」

ある大手アパレルメーカーに勤める中間管理職の女性はこう嘆きます。

1995年に入社し、販売員から実績を積み上げてきましたが、エリアマネージャーを任されるまでになった矢先に、上司から早期退職を勧められたといいます。

得られる退職金は約800万円。今のご時世、決して少なくはありませんが、定年まではとても持ちませんよね。

「セカンドキャリアとして紹介された仕事も、介護などこれまでにやったことのない業務ばかりで当惑しました。まだまだこれからキャリアを積み上げていきたいと思っていたのに。確かにアパレル業界は、ユニクロに代表されるファストファッションに押され、どこも苦戦しています。ただ、今まで積み上げてきた仕事を全否定されてきたようで、悲しくなりました」

彼女は今の企業にできるだけ勤め続けたいと考えていますが、風当たりが強くなるのは覚悟しているといいます。

早期退職の実情

早期退職の最近の実情はどうなっているのでしょうか。見てみましょう。

東京商工リサーチが12月6日に発表した「2019年(1~11月)上場企業『早期・希望退職』実施状況」によると、この期間に早期・希望退職者を募集した上場企業は36社で、対象人数は1万1351人に達しました。

2018年は過去20年間で社数、人数ともに最少を記録しましたが、今年は約3倍まで増加。

リーマンショックの影響が大きかった2009年に比べれば少ないものの、2014年以降は比較的低水準で安定していただけに、2019年の急増は大きな「潮目の変化」となりました。

業種別では、不振が目立つ電気機器メーカーの東芝(1410人)、富士通(2850人)、さらに経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI、1200人)、ルネサスエレクトロニクス(約1500人)などが名を連ねます。

薬価改定や国外メーカーのライセンス販売終了を控えたアステラス製薬、中外製薬など製薬会社、さらに食品、卸売、機械、繊維製品も目立っていました。

「先行型」の企業増

東芝などの製造業はかねてから業績不振が伝えられており、今回の早期退職募集も理解しやすいですよね。

ただ2019年の特徴は、業績が堅調な業界大手も、来年以降に「先行型」で早期退職を募る方針を明らかにしていたこと。今年以降も多数の社の実施予定が判明しています。

50歳以上の管理・専門職を対象にするとみられる企業も多く、体力があるうちに社員構成を若返らせ、人件費を削減したい意図が見えます。

また、データ解析やマーケティングなどの人材をより多く確保する方針を掲げている企業もあり、「企業が求める人材」がこれまでよりも高度化している様子がうかがえますね。

専門家の解説

この調査結果について、大手証券のストラテジストはこう解説しています。

「電気機器メーカーが苦戦しているのは、結局のところ、かつての『総合力』で勝負する体質が抜けきらない老舗メーカーが目立つ為です。ソニーのようにセンサーなど電子部品に注力するといった『選択と集中』に踏み切れなかったツケが回ってきたということでしょう。

今回の調査で重要なのは、企業が『先行型』の早期退職募集で、大量採用の『バブル入社組』を切り捨てる方向に舵を切り始めたということです。企業もかつてのように終身雇用を保障できる体力はもうありませんから、余裕のあるうちに『高い賃金水準の管理職』を切り捨てる代わりに、より専門的な知識のある若手人材や、中途入社の優秀な人材を確保したいということなのでしょう」

労働組合、株主の変化

管理職の中でも、とりわけ50代以上のいわゆる「バブル入社組」に対する風当たりは、これまでも強かったですよね。

ではなぜ今年になって急に早期退職募集の流れが強まったのでしょうか。

ある記者はこう話しています。

「一つは、令和になったことです。そんな単純な、と思われるかもしれませんが、5月という比較的年度替わりに近い時期に新元号に変わったことで、日本社会に『長い昭和としての平成』が終わった、という節目の意識が共有されつつあるのだと思います。

企業としても、大胆なリストラ案を進めるには何らかの大義名分が欲しい。『日本は新時代に入った、われわれも生き残るために改革しなければ』と言えば、非情な決断もいくぶん通りやすいでしょう。

もう一つは、安倍政権下で進められた企業のガバナンス強化が挙げられます。これは株式会社に対して、海外投資家も含めた株主の利益を最大化するように企業運営を透明化することを求めるものですが、これもリストラの大義名分になった。

例えば、『人件費を圧縮すれば、設備投資に資金をまわして主力事業を強化できる』とか『より高度な人材を確保するために適切な人件費の配分をする必要がある』といった、『株主利益』を掲げると話が通りやすいというわけです。

かつての日本企業なら『企業は従業員のもの』という考えが徹底していましたから、リストラを断行しようにも、労働組合の力も強く実現できなかった。しかしいまは株主有利の時代ですし、実際に海外ファンドなどの『モノ言う株主』に突き上げられれば、応じざるを得ない部分もある。環境が大きく変わったということです」

「歴史的幸運」の終わり

バブル入社組といえば、採用されたときは「内定をもらうとハワイ旅行に連れて行かれた」「2週間、毎日高級焼き肉などの外食に連れて行ってもらった」など、超・売り手市場ならではの「囲い込みエピソード」に事欠きませんでした。

もちろん、当時は「どんなに厳しくても、我慢してずっと頑張れば会社が守ってくれる」という終身雇用の前提がありました。しかし、この30年間で時代は大きく変わりました。

そもそも終身雇用というシステム自体が、戦争特需、高度経済成長といった戦後日本にとっての「歴史的幸運」によって生まれた特殊なものでした。

いまの50代は、その最後の果実を享受できた「幸福な世代」である一方、「社内政治、国内での競争さえやってればいい」という意識が強く、スマートフォンをはじめとする新たなテクノロジーに対応することにも遅れ、日本経済の地盤沈下の一因を作った責任のある世代であるとも言えましょう。

今後、早期退職募集の流れは強まりこそすれ、衰えることは無いのは間違いありません。

40代のいわゆる就職氷河期から下の世代は、危機感を持って生き残りに必要なスキルや人脈を身につける必要があるでしょう。

私も頑張っています。あなたも一緒に頑張りましょう!

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です