ハラスメントどう防ぐ 「禁止規定なし」では限界も

職場でのパワーハラスメントやセクシュアルハラスメントへの対策が法改正で強化されています。ハラスメントは組織で働く人にとっては敏感な問題でしょう。私たちはこれらをどう防いでいけばいいのでしょうか。

今日の目次

  • 防止措置の義務付け
  • 日本のダメなところ
  • 行政救済の必要性
  • カスハラやSOGIハラ

■パワハラ・セクハラ、企業に防止措置を義務付け

パワハラ防止策を企業に義務付け、セクハラ規制を強化する法律が5月に成立しました。早ければ大企業は2020年4月、中小企業は22年4月に、パワハラを防ぐための措置が義務付けられます。従わない企業には厚生労働省が改善を求め、応じなければ、企業名を公表する場合もあります。

確かに、パワハラについてはこれまで何も規制がなかったところから法制化に踏み込んだのは一歩前進とは言えます。国はパワハラ防止の広報や啓発などの活動は実施してきましたが、法規制という次の段階にこぎ着けたことは大きいですね。でも、まだまだ甘いというのが実際のところです。

一方、セクハラはというと、既に男女雇用機会均等法で企業に防止措置を義務付けているんですね。でもこれで守らせる仕組みができているとは言いがたいのが実際のところ。厚生労働省の調査では4割の企業がセクハラ対策に取り組んでいないことが分かっています。パワハラに関しても同じようにならなければいいのですが・・・。

法改正に関しては、実はセクハラに関しても、自社の社員が他社の社員にセクハラをした場合、調査に協力することなどを入れた法改正があったんです。

日本のダメなところ

でも、日本って、何か大変な事件が無いと、法改正とかしなくないですか?なぜ、手遅れになって何か起きてからじゃないと国は動かないんですか?働き方改革だって、電通の社員の高橋まつりさんが、過労で自殺に追い込まれて、その母親が社会に強く訴えたことでようやく動いたじゃないですか。そこまでしないと国は動かないってすごく悲しくないですか?今回のセクハラの法改正についてもそうです。財務省元事務次官のセクハラ事件が起きたことを受けた改正なんです。日本はいつもそう。何か事件が起きてからじゃないと何もしない。もう亡くなった人は戻ってこないし、傷つけられた人の傷は癒えないのに・・・。

しかもセクハラの法改正は、十分な議論の時間がなかったため、防止や救済なども踏まえた改正には至らず、マイナーチェンジにとどまっています。次の法改正ではどうするんでしょうね。

■行政救済を充実させるべき

今回は、パワハラやセクハラを「法的に禁止する」という規定は入りませんでした。

本当に甘いですよね。禁止規定がないと抑止力に欠けますし、違法と認めて救済命令を出すこともできません。まだまだ被害者にとってはありがたい法改正とはなっていません。下記のように、実際の相談件数も年々増えているんです。国会議員の皆さんはこの実情を本当に知っているんですかね。

もちろん、行政に頼らず高橋まつりさんのお母さんが訴えたことも記憶に新しいように、被害者や被害者親族が訴訟を起こすことは今も可能ですが、司法による救済を受けられる人は一握り。もちろん費用もかかります。完全な法改正がされるまでは無料の行政救済を充実させるべきではないかと思います。

ちなみにですが、オーストラリアには公正労働委員会という行政機関があり、いじめ紛争の救済命令を出しています。訴えを受けたら2週間以内に行為の差し止めや当事者同士の勤務場所を引き離すなどの命令を出します。迅速な対応は被害者のメンタルヘルス悪化を防ぎ、雇用の継続にもつながります。

この、「迅速な対応は被害者のメンタルヘルス悪化を防ぐ」というのは本当に大切です。こういうことを国会議員の方々はどれだけ分かっているんでしょうか。勉強してるんでしょうか。メンタルをやられてしまうと、ほぼ不可能というくらいに傷が残ります。長期間かけて正常に戻すとは言いますが、戻らない人もいます。正直、なってしまっては手遅れと言う場合もあります。この重大性を分かっていない人が多すぎます。もっと国は認識すべきです。メンタルをやられてしまっては、ひいては労働力人口・労働量の減少を招き、日本がますます景気の悪化の一途を辿ってしまうでしょう。

6月に採択された国際労働機関(ILO)の条約は、職場での暴力とハラスメントを禁止すると明示しています。日本政府は賛成しており(当然!)、禁止規定の法制化にこのまま進むといいのですが・・・。

■カスハラやSOGIハラ対策にも期待

さらに、

実は顧客からのハラスメント、いわゆるカスハラ(カスタマーハラスメント)についても必要な措置を講じるようにと国会の付帯決議で明記されたのはご存じでしょうか。

先日、佐賀県嬉野市がある市民に対して、今後は窓口で対応しないと通知を出したと報道されました。顧客からハラスメントがあった場合、どう対応するか悩む事業主は多いはずです。官民の取り組み例などを参考に、労働者を守るための具体策を、厚労省で作成する指針に盛り込む必要があります。カスハラに対して毅然とした態度を取る後押しとなるような指針を期待したいですね。

さらに、SOGIハラ。SOGIハラとは、あまり聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれません。読み方としては、ソジやソギ、もしくは語末を伸ばしてソジーやソギーと読むことが多いです。また、アルファベットをそのままエスオージーアイと読むこともあります。 SOGIとは、Sexual Orientation and Gender Identityの略で、日本語に落とし込むならば「性的指向と性自認」ということになります。

その、 「性的指向・性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)については対策の義務化が指針に明記されることが付帯決議に盛り込まれました。SOGIハラの相談では自身の性的指向や性自認も明らかになることが多く、言いにくいため、被害が潜在化しやすいんです。企業の予防が重要になってきます。

人種や障害などに関するハラスメントも起きているのは事実ですが、被害者は声を上げづらいのがまだまだ実際のところ。

ハラスメント全般に関して、目が届きづらい様々なところで問題は間違いなく起きています。広く目配りした対策が求められます。

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