メンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ 新卒で年収1000万円 鋼のメンタルも必要

はじめに

「年収1000万円で入社しませんか」。

最近新卒採用でこうした高額な収入をうたう会社が増えてきましたよね。

もはや年功序列は古すぎます。私の勤務先は完全に年功序列ですが。

一部の優秀学生にしか関係ない話と捉えられるかもしれませんが、実はそうではないんです。

日本企業で働こうとする就活生だけでなう、既に働いているビジネスパーソン全員も対象となる話なのです。

くら寿司の事例

回転ずし大手のくら寿司が打ち出した「エグゼクティブ新卒採用」。のニュースは記憶に新しい人もいるでしょう。

幹部候補生には、新卒でありながら年収1000万円を提示したことで、大きな注目を集めました。同社の有価証券報告書によると、従業員の平均年齢は30.4歳、平均年間給与は約450万円。年収1000万円はこの2倍以上で、外食産業では破格の待遇です。

もっとも、くら寿司は過去には新卒採用に関して裁判沙汰にもなっていますので要注意だと思います。

2010年に起きた「内定取り消し騒動」がそうです。同社の入社前研修で社訓を35秒ほどで言えなかった内定者に入社辞退を求め、内定辞退者の1人がくら寿司と裁判で争ったと毎日放送が報じ、のちにTBSもこのことをテレビ番組で紹介、それに対してくら寿司が反論するという騒動が起きました。

事の真相は不明。しかし、もし報道されたことが事実であるとすれば、くら寿司は採用した責任があり、入社前研修をもって辞めさせるのではなく、一定期間はしっかりと責任を持って教育するべきだったと非難されてしかるべきでしょう。社訓を35秒ほどで言えない程度のことで教育をあきらめるというのは安易な考えで、同社の教育に対する姿勢に疑問を持たざるを得ません。

報道が事実でないとしても、こういった騒動が起きてしまえば、事の真相にかかわらずイメージが悪化してしまうことは、事前に強く認識しておくべきでしたよね。このような騒動を起こすような企業に就職したいと思う人はいないでしょうし、そのような企業の店を利用したくないと思う消費者は少なくないはずです。イメージ悪化は客離れにつながるので、イメージが悪化しないように事を穏便に済ませるべきだったのではないでしょうか。

昨今はSNSによって情報が瞬時に広がる時代。それにより、イメージの良し悪しが、いとも簡単に変わってしまう時代にもなりました。イメージの悪化は客離れに間違いなくつながります。SNSの発達が続くなか、イメージ管理の重要性は日を追うごとに増しているといえます。

有名大から多数応募

さて、話は戻ります。

そのくら寿司。6月から応募を受け付けこれまで約200人の応募があったといいます。その中にはなんと東京大や早稲田大など、これまで少なかった有名大も多数あったそう。書類審査やウェブ選考でふるいにかけたほか、途中で辞退する学生もいて、実際に1次選考までたどり着いたのは20人。

応募要件は英語能力テスト「TOEIC」のスコアが800以上。会計知識も必要だといいます。面接では、発想力や独創力を深掘りし聞いたそうで、数人に内定を出したといいます。

同社では店舗の海外展開を強化していてグローバルに働ける人材を欲しています。これまでは優秀な店長経験者を異動させたり、中途採用で外部から調達したりして対応してきたが限界がありました。

幹部候補生は入社後、店舗に配属。その後、本社の広報や宣伝などの専門部署でも経験を積み、2~3年後に海外展開などを手がける花形部署の企画部門に配属されることを目指します。

これとは別に2020年春入社では通常ルートで約200人が入社します。年収に差があると一般で入った同期社員からは妬まれそうですが、

「妬みをはねのけるような鋼のメンタルを持つような人でなくてはグローバル競争に勝ち抜けない」

と関係者は話しています。

年収の話

国税庁によると、日本のビジネスパーソンの平均年収は約440万円。年収1000万円を超える人はわずか5%しかいません。日本企業は年功序列が基本のため、新卒学生が含まれる20~24歳に絞ると267万円にとどまります。

 

ディスコが学生向けに実施した調査によると、就職先企業を選ぶ際に重視する点(複数回答)として「給与・待遇が良い」を挙げたのは44%と「将来性がある」(48%)に次いで高い結果となりました。具体的には、

「将来、年金がきちんともらえるか不安だから、できるだけ給与の高い会社に入りたい」

といった意見が聞かれます。

こうした声に応えるかのように、優秀な学生を確保しようと高額な待遇を打ち出す動きが広がっています。

NECはIT人材を確保する目的で、新卒でも学生時代に著名な学会での論文発表などの実績があれば1000万円超の報酬を支給します。

眼鏡専門店のオンデーズ(東京・品川)は一律だった初任給を廃止し、学生時代の接客アルバイトの実績など個々の入社時点の能力や実績を反映させる新たな制度を20年4月に導入します。年収は最大で600万円を提示します。20年卒採用では2~5人が対象になる見通し。

誰もがうらやむ特別枠採用。実際入社する人はどんな人なのでしょうか。

次は、いち早く制度を取り入れたヤフーのご紹介です。

ヤフーの事例

田中英太さん(仮名)は「エンジニアスペシャリストコース」という技術職の特別枠で17年に新卒で入社しました。年収は一般社員の1.5倍の650万円以上。現在はユーザーのデータを扱う専門部署に所属しています。

特別枠の応募資格はプログラミング競技大会で一定の成績を収めていたり、自然言語処理などの分野で論文の発表経験があること。田中さんは国立大大学院出身で、在学中は複数の論文を発表したり、関連イベントに登壇したりして、プログラミングの世界ではちょっとした有名人でした。

就活では海外企業からの誘いもありましたが、「ワークライフバランスを重視したい」との思いからヤフーを選択しました。

能力が高く評価された故の悩みもあるといいます。入社後すぐに、先輩が1カ月くらいかかって取り組んでもできなかった課題をやるよう命じられました。

「上司の期待値が高くて常にプレッシャーがありますよ」

と吐露しています。

厚待遇の目的

こうした厚待遇をうたう募集。実は単に学生を「釣る」だけが目的ではありません。

日本企業では年功序列や終身雇用を前提とした「メンバーシップ型雇用」がいまだ主流です。職務や勤務地が限定されず、新卒一括採用で大量に人材を獲得。会社が人材を大事に育てる仕組み。社員が会社へ忠誠を誓ってくれるため、会社にとっても都合が良かったんです。

しかし、デジタル化やグローバル化の進展で企業はイノベーションを起こせるような専門性のある人材を求めているのが現在。

「大学を卒業したばかりの若者をゆっくり育てる時間はない」

のです。

会社は仕事内容に応じたポストを用意し、優秀な即戦力のある人材を新卒や中途を問わず選別し採用する、「ジョブ型雇用」へのシフトが迫られています。

能力ある者は評価するが、そうでない者には退場を促す――。「新卒1000万円採用」はこうした日本企業の転換の象徴と言えるでしょう

終身雇用に終わりを告げた社長の発言で盛り上がったトヨタ自動車は、総合職の採用に占める中途採用の割合を中長期的に5割とすることを決めました。

新卒に偏った採用は曲がり角に来ているのは間違いありません。企業の人事に詳しいデロイトトーマツグループの古沢哲也パートナーは、

「近いうち、日本の人事の仕組みは劇的に変わるだろう」

と予測しています。

平均年収が1000万円を超えるある大手商社に勤務する20代の男性社員は安住していません。将来は留学して経営学修士号(MBA)をとることを視野に入れているといいます。

「在学中はもちろん、社会人になってからも勉強をし続けなければ、必要とされる人材にはなれない」。

年収1000万以上もらって、このような考えをされていて、素晴らしい限りだと私は思いますが、

就活をする際には、自分に、「エンプロイアビリティー」(雇われる力)はあるかという点にも注目しながら就活を進めていくことを是非ともおススメします。

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