医師が明かすストレス対策 心を病まないための習慣 モーニングルーティンとは?

長時間労働などの働き方が問題視され、「働き方改革」に取り組む企業も増えてきてはいますが、まだまだ絵に描いた餅。ストレスから心を病む労働者は絶えませんよね。

前回は「医師が明かす ストレスに強い人、弱い人の決定的違い」について紹介しました。今回はつらいときに意識すべき感覚「SOC」と、身につけるべき習慣について、前回同様、50社以上の企業を担当してきた精神科産業医の吉野聡さんに聞いた記事がありましたので、そちらを踏まえてお話をさせていただきます。

■心を病まないためのポイント「SOC」

まず、SOCって何でしょうか?

これはちょっと難しいんですが、 Sense of Coherenceのそれぞれ頭文字をとったもので、日本語に訳すと、「首尾一貫感覚」ということです。

前回、ストレスに強い人と弱い人の違いがどこにあるかのポイントの1つが、合理的に考えられるかどうかということをご紹介しました。それが【習慣1】です。精神科産業医の吉野聡さんは、物事の感じ方・捉え方はトレーニング次第で変えることは可能だと話していましたよね。今回も、ストレスに強くなるための習慣を引き続き紹介していきます。今回のキーワードは、冒頭で申し上げた「SOC」と「ルーティン」。

大きなストレスがかかる出来事に遭遇した時、心を病まないためのポイントとなるのが、「SOC(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)」だと吉野さんは話します。

第2次世界大戦中にアウシュビッツなどの強制収容所で過ごし、その過酷な環境を生き抜いた人たちを調査した研究があります。生還者の中には、理不尽かつ過酷な環境にも関わらずストレスに打ち勝ち、健康で長生きした人もいました。彼らの共通点を米国の医療社会学者が研究して提唱した概念が「SOC(Sense of Coherence)(首尾一貫感覚)」(図1)なんです。下記の図をご覧ください。

「SOC」という感覚を日々意識すれば、大きなストレスがかかる出来事や困難な状況に直面しても、心身の健康を守りやすくなるとのこと。こうしてみると、簡単に言うと、「プラス思考」って感じですね。

SOCには、「有意味感」(=チャンスを見いだす思考)、「把握可能感」(=俯瞰[ふかん]&段取り思考)、「処理可能感」(=楽観思考)という3つの感覚(思考)があり、これらを日々意識すれば、SOCの力は少しずつ鍛えられるそうです。

■平常心を養う効果が期待できるルーティンとは?

さて、次の言葉はよく聞きますよね。「ルーティン」。私はルーティンといえば公務員を思い出してしまいますが、それはさておき、前向きに考え、ストレスに強くなる3つめの習慣として吉野さんが挙げるのが、平常心を養う効果が期待できる「モーニング・ルーティン」です。

40代になっても世界の第一線で活躍し続けたイチロー選手のルーティンは有名ですよね。ご存じない方のためにここでご紹介しましょう!

イチローは、翌日のゲームの開始時間から逆算して、寝る時間、起きる時間、食事の時間など、全てのスケジュールを決めています。年間の予定は決まっているので、シーズン開幕から、彼の動きは全て自動的に決まってくるのです。

しばしばロボットに例えられることもあるイチロー。 イチロー選手は昔から本番の試合よりも、それまでにいかに準備したかということを大事にしています。終始一貫、自分の決めたことをきっちりとこなすことが成果を出すカギであると信じてやり続けたのです。

こうしたイチローの思考は、生活のなかでもルーティンとして表れます。朝昼兼用のブランチにいつもカレーを食べていたことはあまりにも有名です。ただ、カレーを食べていたのは、マリナーズに在籍していた間。その後は別の食事に変わり、年単位でずっと同じものを食べ続けました。食パンとうどんだったり、食パンと素麺だったり、いくつかのパターンがあります。同じものを食べ続けるのは、違うものを食べることにより、美味しくなくて気分が下がるとか体調を崩してしまうといった、野球に影響しかねない“不確定要素”を入れたくないからです。もっとも、普通の人なら飽きてしまうものですが、イチローは飽きるスパンが人とは違う。食だけでなく、彼は車の中で聞く音楽は同じ曲を2、3時間聞いていても平気なんです。

毎日同じことを繰り返せば、『今日は何しようかな』と考える必要もなく、余計なことにエネルギーを注がずに仕事に取りかかれます。スポーツ選手で言えば、競技に挑めるウォーミングアップが完了するということです。精神を安定させ、コンディションが整えば、大事なプレゼンといったプレッシャーのかかる仕事に挑みやすくなりますよね。

さらに、集中モードに入りやすくなることで労働生産性も上がるでしょう。毎日同じ行動を繰り返せば、自身の体調や気分の変化にも気づきやすくなる。もちろん、上司・部下や顧客に邪魔されずに仕事を片付けられることも『モーニング・ルーティン』のメリットです。

【モーニング・ルーティンを行う3つのメリット】

(1)一番いいコンディションで仕事に取りかかれる

ベストコンディションになるための準備をルーティンに取り入れれば、「何をしようかな?」と考えるムダな時間を省き、おのずと一番いい状態で仕事に取りかかれる。仕事モードに切り替わる「気持ちのスイッチ」の役割も果たす。集中モードに入りやすいので、仕事の生産性も上がりやすい。

(2)平常心を養う

毎日同じ行動を繰り返すことで「これさえやれば大丈夫」といった心の安定につながり、平常心を養える。

(3)体調不良など小さな変化に気づく

ささいな体調の変化に気づきやすくなり、「大事な仕事はBさんと分担してミスを防ごう」といった対策を考えられる。

■結果を出す人は、何らかのルーティンを持っている

結果を出しているビジネスパーソンは、何らかのルーティンを持つ人が多いんです。「時間の使い方」や「能力の高め方」には力を注ぐ人が多いんです。そこに、ルーティンなどで「コンディションの整え方」を意識することを加えれば、さらにプレッシャーやストレスに負けない心を鍛えられるでしょう。

【ベストなモーニング・ルーティンを作る3つのコツ】
(1)ベストな状態で仕事に取りかかるには何をすべきか考える。
(2)限られた時間内で、合理的な行動を考える。
(3)特別なことはしない。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です