転職 メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用?

 40代、50代の転職者が急増していることはこの連載でもご紹介してきている通りです。活況を呈している40代、50代の転職ですが、その転職どきについて間違えているケースが少なくありません。では、どんなタイミングであれば転職してもよいのでしょう。逆に、どんなタイミングでは転職すべきでないのでしょう?

 今日はそういったことをテーマにお話ししていこうと思います。

転職紹介人数 近年の推移

 日本人材紹介事業協会(人材協)が半期ごとに公表している転職紹介人数によれば、2018年度下期の転職紹介人数は3万8316人、前年同期比23.3%の増加でした(2018年度上期は21.4%増)。年齢別で見ますと、25歳以下が7245人、26~30歳が1万3401人、31~35歳8112人、36~40歳4530人、41歳以上5028人ですが、このうち前年同期比での増加率が最も高いのが41歳以上で40.4%なのです(次いで36~40歳が23.9%。25歳以下23.3%、26~30歳と31~35歳は同率で19.8%です)。

 増加率が最も高いのが41歳以上で40.4%というのは驚異的ですね。やはり、近年の傾向として40代以上の転職が活況な証拠でしょう。

 このデータは人材紹介大手3社(ジェイエイシーリクルートメント、パーソルキャリア、リクルートキャリア)の転職紹介人数総計の公表値ですので、他中堅中小の人材紹介会社の実績値は入っていません。しかしこの3社が占める転職紹介市場のシェアはおよそ6割ほどと見られていますので、マーケットの状況を示すデータとしてはおよそ正しいと見て間違いないでしょう。

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■45歳、50歳は転職の節目になり得るのか

 「来年50歳を迎えるので」「転職可能なのは45歳までと聞きますので」。40代以上の転職が活況な状況とは言え、年齢を気にされる方はまだまだ多いです。ただ、年齢は年えりでも、「節目」で転職を考えることは、正しいのでしょうか。それとも間違っているのでしょうか。

 40歳、45歳、50歳、55歳。人間の心理として、5刻みで節目を考える思考パターンを持つ人は非常に多いですよね。1年を西暦や自分の所属する会社の会計年度でみて、区切り・節目として考える。あるいは1カ月、1週間単位で行動する。業務上での新たな取り組みや自己学習などについて、本当は今日から、明日から始めればいいのに、なぜか私たちは「よし、来週からやろう」「来月から始めるぞ!」としがちです。

 そう、こうした数字での区切り、節目には本来、全く意味はありません。年齢ならなおさらです。私もブログを始める時に、節目を考えました。でもその時、ふと今までの自分の経験を考えました。

 逆に、節目節目を考えてしまうと、その物事は継続しないことのほうが圧倒的に多いんです。つまりは、なんでもそうですが、

「やりたいと思ったときにやる」のが一番良い

んですね。これは間違いありません。

■採用側が意外に重視する「年齢の節目」

 この「年齢刻み問題」については、ここで話を終えてもよいのですが、しかし、採用する側も同じ人間というところに、この年齢刻み問題の妙があります。転職する側が40歳、45歳、50歳、55歳と、5刻みで節目を考えるように、採用する側の経営者や部門責任者、人事もまた同じように考えるわけです。

 繰り返しますが、5刻み自体には本質的意味はありません。しかし、採用する側の意識、イメージの「年齢節目」としては、「同じ職務レベルの方なら45歳を超えているよりも、手前のほうが良いなぁ」「うーん、50歳を超えていると、ちょっとねぇ。48歳くらいの人がいいですね」というような採用意向があるということを、私もよく記事などで目にします。

 ミドルやシニア世代が、そのポジションで任に就いた際に、着任後どれくらいの期間でその人が全体を掌握して自らのテーマ設定、課題設定をし、次のステージの実行に移ってくれそうか、というのは大事な問題です。ラーニングに2~3年を要するケースは、より上位の職責になればなるほどありますので、「定年年齢マイナス現年齢」が何年あるのか。それもこの年齢刻みと相関することがあります。「このポジションなら最低10年はやってほしい」などの理由から、採用年齢を50歳未満にしたい、45歳前後のほうが望ましい、などとするわけです。

 また、大手企業になりますと、多くが役職定年制を導入していますので、実際問題、55歳以上を新規で役職者に配置するわけにはいかないのです。プロパー社員を役職定年、早期退職勧奨などしているのに、いくら力がある人でも外部から同世代を採用するのははばかられるというような事情があるケースも少なくありません。内部の反発などもあるでしょうからね。

 このように、実は採用する側の事情、そこから発生する心情によって「年齢刻み問題」は存在することを、ぜひ転職する側の読者のあなたは心に留めて、応募先企業の情報や状況をしっかり確認しつつ応募や面接を進めてほしいと思っています。

■「意に沿わない異動があった」の妥当性

  これを読んで頂いている方で、意に沿わない異動を経験された方も少なくないでしょう。 私もその一人。全く別の会社に出向を命じられた経験があります。

 その会社はいわゆるブラック 企業で、雰囲気も最悪、ひどいものでした。しかし私は病まずに済みました。いや、正確には、 「病まないうちに戻れた」っていうのうが正しいかもしれません。自分の経験もロクに生かせず、 雰囲気も静かすぎるので非常に居づらい。雑談もしづらく、通勤時間も増え、本当に辛い体験でした。  

 私は思い詰めても病んでしまうと思っていたので、逆に気楽に考え、「こんなとこどうでもいいや」 ぐらいに気持ちを切り替えました。もともと家庭の事情もあったため、残業はせずすぐに帰っていました。

 しかし、出向で残念ながら病んでしまった人が数人居ました。にもかかわらず、その会社は何も対策をしていません。本当にどうしようもないと思っています。  

 今、こうして出向元に戻ってきて、比較的平和に暮らしています。しばらくはまだリハビリが必要な 感じですが、貴重な仲間などのおかげで元気になってきている自分がいます。 さて、話はそれてしまいましたね。本題に戻りましょう。

 ミドルやシニア世代の皆さんにとっては、キャリアの専門性、連続性を確保しにいくことは悪くない筋です。日本もようやく従来の「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」を前提とするように変化してきたと、HR(ヒューマンリソース)関連のニュースや書籍でいわれるようになりました。

 「メンバーシップ型」とは、特定の職種を前提としない総合職採用とその後のジョブローテーションをしていく、日本の典型的な雇用パターンだといわれてきました。対する「ジョブ型」とは、学卒時点から職種専門領域を特定し、採用時からどの職種で採用するのか、入社後キャリアパスを積むのか、ルートが決まっている雇用パターンで、欧米は以前からこのスタイルです。

 私は、若手から中堅~30すぎくらいまでは、いろいろな職務を経験してみたほうがよいと考えています。そのほうが人間的にも魅力があります。それに、今の日本も段々と変わってきています。ずっと同じ会社にいる人より、いろんな会社を経験してきている人のほうが転職で有利になってきているという話もチラホラ聞きます。

■「意に沿わない異動」の真の理由を確認する

 ところで、その意に沿わない異動の原因はなんだったのでしょう?

 例えば、自分の専門畑と思ってやってきたこの数年来の職種があるとして、その期間中の成果はどうでしたか?わたしは、どうなんでしょう。選ばれし人が行く場所とか言われてましたが、たぶん私は人間関係で色々悩みがあったので、飛ばされて距離を置くべきと思われたのかもくらいに思っています。

 厳しい話ですが、「これはこのまま続けさせても難しいな」「別の役割を探させたほうがよさそうだ」という「職種の不適合」を突きつけられての異動であった場合、いくら転職で元の職種に戻そうとしても、それはハッピーなこととは言い難いでしょう。それなりの人がしっかり経歴実績を見ると、そこはバレてしまいますから、応募先で採用されることも難しいと思われます。

 この場合は転職の前に、まずしっかり今の会社で「別の道」への少なくとも兆し、取っ掛かりを見いだすまで奮闘しましょう。強みがない、不明瞭なままでの転職ほど危険なことはありません。

 上司、同僚との意見の衝突や人間関係的な折り合いの悪さからの転職を検討される人も、悲しいかな、非常に多いです。私も前の会社を転職しようと思った理由の一つです。「何をやるか」と同じくらい「誰とやるか」は大事なんですよね。

 なので、パワハラや納得しがたい上司の判断環境などから離脱することも、私は積極的に取り組くべきです絶対に。自分らしくハッピーに働けない環境に居続けることほど不幸なことはありません。

 ただ、念のためご確認ください。第三者的な視点で俯瞰(ふかん)してみて、あなたの意見に十分な納得性、転職応募先企業のトップなどが聞いて「なるほど」と腑に落ちる理由があるでしょうか。そもそも現職で、まずしっかりその対立に向き合った上での結果と判断でしょうか。

■怒りに任せた「不満転職」は繰り返しがち

 これも「あるある」なのですが、上司との折り合い、会社の判断・方針への違和感を訴える人の話を整理してみると、「それは社長は、ダメだと言いますよね」「それは事業のことを考えても、通らない意見じゃないですか」という、転職しようとしている当人側に非があるケースも、実は結構多いです。

 こういう人が、そのまま転職すると、次の会社でもまた同じような理由で上司との折り合いや会社への違和感を訴え転職します。

 瞬間湯沸かし器のような感じで「転職だ!」と動く人もいますが、ここはいったん冷静になって、感情的に「幽体離脱」してみて、あなたと相手(上司、会社など)との双方の言い分を整理してみましょう。そのようにして再度見てみれば、今の会社や職場は、実は世にある数多(あまた)の会社や職場の中でも結構いい場、恵まれた環境かもしれません。

 40代、50代は、一方では介護問題やお子さんの社会人独り立ちなど、家族事情や環境の変化で転職を考えるタイミングも巡ってくる時期の方も多いでしょう。今がそうでなくとも、いざという時のために、自身の仕事の軸を棚卸ししておくことをぜひお勧めします。

 

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