「長友」と言えば、もう有名。知らない人は居ないくらいになったでしょう。平愛梨さんと結婚して、二人の子供に恵まれています。彼はスタミナがすごいことで有名なのはご存じでしょうか。スタミナがすごくて病気などしない人というイメージがあった私ですが、色々と記事を読んでみると、ご苦労もやはりなさっているようです。そこで彼が始めたのが、いわゆる食事療法。これは私も本当に大切なことだと分かっています。
それでも私ができているのは、毎朝のこだわりのスムージー。糖質制限、昼は基本食べない、夜は妻の手料理。とこのくらい。そして、土日は結構好きなものを食べてしまっています。もう少しストイックにしてもいいかなと言う気もしますが、その辺は我慢しすぎてもストレスなのでバランスとって生活してます。
今日は長友選手が取り入れている健康法と言っても良い食事療法についてご紹介しようと思います。
目次
今日の目次
- ファットアダプトとは?
- シェフとの出会い
- 最適な糖質量
- 効果
さて、長友選手は、「今、プロ生活12年間のなかで一番良いコンディションを維持している」と語っています。実は筋肉系のケガが多く、食後に眠くなり、ピッチでもぼーっとしてしまうことがあったそうです。そこで彼は2年前から食事法を転換。昨年は肺気胸による手術を医師も驚く回復力で乗り越えたんです。
長友選手が実践している食事法の監修者である北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師と、長友佑都選手の専属シェフ・加藤超也さんの話も踏まえてご背負い迂回していきましょう!
■ファットアダプトとは?
彼を2年前から支えているのが「ファットアダプト」という食事法です。長友選手が実践している「ファットアダプト」とは何なのでしょうか?初めて聞く方も多いのでは?
『長友佑都のファットアダプト食事法』(幻冬舎)
上記は、2019年6月に発売された本です。この食事法の監修を務めた山田悟医師による科学的根拠の解説も記されています。2019年6月22日に出版記念トークショーが開催された際に長友選手はこう話しています。
「この食事法に出合うまでは、1年間に肉離れを2~3回起こし、ピッチでの集中力低下にも悩んでいました。30歳を過ぎたら引退しないといけないかもしれない、という危機感が常にありました。しかし、ファットアダプトを取り入れてからは筋肉系のケガは一度もない。メンタルのコンディションも最高にいい」
まず、このファットアダプト。一言で言うと、「アスリートが最高のパフォーマンスを発揮できるようサポートするための食事法の1つ」です。
具体的には、「糖質の摂取を“その人に適した量”にして血糖値の乱高下を抑えると同時に、良質のたんぱく質と脂質を積極的にとる」というもの。この食事法を実践することで、たんぱく質の摂取で良好な筋肉の状態を向上・維持しつつ、脂質(ファット)をエネルギー源として上手に使える「ファット・アダプテーション(脂質適応状態)」の体質に移行していくことができます。要するに、糖質制限とまではいかないまでも、糖質コントロールといったところでしょうか。下記の一覧表を見ていただければ一目瞭然ですね。
「ファットアダプト」は、アスリートを対象とした糖質制限食。血糖変動によるパフォーマンス低下を防ぎ、体脂肪を燃えやすくするための食事法。「ロカボ」は、一般の人向けの緩やかな糖質制限食のこと。1食20~40g×3回、それに間食10gを合わせて1日70~130gの糖質を摂取する。メタボやロコモの解消、認知症予防などにもつながります。
先日ブログでもお話ししましたが、食後に血糖値が急上昇することを食後高血糖(血糖値スパイク)などと呼び、近年はそのリスクが大きく取り上げられています。食後高血糖があると心血管疾患による死亡リスクが高くなることが国内の研究からも明らかになっています。さらに、血糖値の乱高下は、集中力や食後の眠気などにも密接に関係します。当然、アスリートのパフォーマンスにも大きく影響します。
普段から糖質を控えた食事をすることにより、食後高血糖を防ぐと同時に、脂質を効率的に燃やしてエネルギーに変えられるような体に適応させていく、というのがファットアダプトです。
これまで「カーボローディング[注1]」をしていたアスリートがファットアダプトに切り替える際には、2~4週間かけて体の主たるエネルギー源を脂質に切り替える必要があります。後で詳しく触れますが、具体的に摂取する1食当たりの糖質量は、アスリートの体質により変わります。
[注1]アスリートの世界で長く主流だったエネルギー摂取方法。試合やレースなどの数日前から糖質を多量に摂取することで筋肉内のグリコーゲン量が上がり、持久力が向上する、という考え方に基づいた食事摂取法。
すごいですよね・・・。真逆ですもん。今までの常識が全く間違っていたってことですよね。最近このようなことって増えていませんか?怖いですよね。何が正しいかは自分で見極める必要もありそうです。そして、ネットの情報などをすべて鵜呑みにするのももちろん危険です。
■長友選手と加藤シェフの「衝撃的」な出会い
今の長友さんの専属シェフである加藤さんはどういった経緯で担当するようになったんでしょうか。
長友佑都専属シェフの加藤超也さん
彼は以前、横浜のイタリア料理店に勤務していて、その店に、横浜F・マリノスでプレーしていた中澤佑二さんがよく食事に来ていたのが最初のきっかけ。
中澤さんは、オーダーの際に、肉の部位を細かく指定したり、サラダはドレッシングでなくオリーブオイルと塩を希望するなど、“アスリートとして”の食への徹底したこだわりがあったんです。
彼は、このように食事で体に入れるものにこだわるアスリートの真摯な姿を見て、体に入れるものを作る料理人としての食材知識について、自分自身の無知さに恥ずかしさを覚えたのです。
食を扱う仕事として、人の体の仕組みや栄養についてより多くの知識を得て、アスリートのパフォーマンスを高めるためのサポートができるシェフになりたい、と思うようになりました。アスリートの栄養学の資料を手に入れたり、食事によって体質改善を果たしたジョコビッチ選手の本(『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館))などを片っ端から読み、部屋の壁には「新たな道を作る」という言葉を掲げて、自分なりに勉強をしていました。
食について学び始めて2年たった2016年の早春のこと、いつものようにレストラン勤務を終え、終電で自宅に帰る途中、たまたまツイッター(Twitter)を開くと、当時、インテル・ミラノに所属していた長友選手が自身のケガに悩んでいることや、試行錯誤して食事法を追究し、食事の写真をアップしているのを見たのです。
彼はツイッターをやっていなかったし、どうして彼の投稿を見たのか、よく覚えていないそう。ただ、その投稿を見て、直感的に「この人のサポートをしたい」と思ったそうです。そこで、「長友選手に連絡をとりたい」と思いましたが方法がわかりません。
そこですぐにツイッターのアカウントを作り、彼だけをフォローして、自分の簡単なプロフィールとともに、「アスリートをサポートするシェフとして活動できるなら、今すぐ世界中どこへでも駆けつけて支援する覚悟があります」というメッセージを送ったそうです。素晴らしいですねこの行動力。
そして、深夜に送ったのにもかかわらず、6時間後に長友から返事が。後日、電話で1~2時間お話しし、「日本に帰国したときに会いましょう」と言われました。
そして、「実際に料理を食べて決めたい」ということで、場所は都内某所のマンション。最初の面接が最終面接のようなものですから、人生で一番緊張したそうです。
一品目は「スープ」。枝豆のスープ、トウモロコシのスープ、そして新玉ねぎのスープという3種類のスープを少しずつ提供しました。味付けは水と塩とオリーブオイルだけで、素材の味を味わっていただきました。
後から聞いた話で、「あのスープがびっくりするほどおいしくて感動して、あの瞬間に決めた」と言ってくれたそうです。それから現在に至るまでの3年間は、彼は1年のうち3分の2以上は長友選手に帯同して料理を作り続けています。
シンプルイズベストとはよく言ったもので、結構食事ってそうなんですよね、最終的にはそこに行きつくと私は思っています。素材が最高なものをシンプルに食べるっていうのが一番体にも良いし、美味しいと思うんです。まあかといって私が、高級料理を食べまくっているのかというとそんなことは無いんですけどね。でも、たまにそういう料理を食べると私もびっくりするくらい美味しいと思うことがあるんです。皆さんもそういう経験はないですか?
■食後血糖値を測定して、最適な糖質量を決めた
一方、監修者である山田先生がお二人に関わることになったのは、どのようないきさつがあったのでしょうか。
北里大学北里研究所病院 糖尿病センター長の山田悟さん。糖尿病専門医。食・楽・健康協会代表理事
実は、彼にも運命を感じるきっかけがあったのです。お二人が食の取り組みをなさっていることを紹介した記事が『Number Do』(文藝春秋)という雑誌に掲載されました。その記事を妻(食・楽・健康協会副理事長を務める山田サラさん)が読んで、「運命感じる!」と彼のところに持ってきたのです(笑)。
当時、長友選手と加藤シェフは、「糖質の摂取量を落として血糖値の乱高下を防ごう」という方法に取り組んでいました。しかし、それによって体重が落ちてしまうといった問題を抱えていました。
アスリートに求められる体重は、そのスポーツ(さらにはその中でのポジション)によって変わります。長友選手のようにサッカーにおけるサイドバックというポジションは、ボディコンタクトが多く発生するので、体重が必要以上に落ちてしまうことは当たり負けのもとになってしまいますし、下手をすると負傷につながります。そして、サッカーという持久力が求められるスポーツにおいて、パフォーマンスを維持するために脂質をエネルギーとして燃やし続けられる体に変換する必要もありました。
もしかしたら、彼らの悩みを払拭するためにお役に立てるかもしれない、と彼は思いました。そこで、共通の知り合いを通じて連絡をとったのです。共通の知り合いがいたってことがあまり運命的ではない気もしますがね・・・。(^^;
さて、実際に3人で会って、どのように食事の方向性が決められたのでしょうか。
長友選手は、かつて「食後に眠くなる、頭がさえない、ピッチに立つときにぼーっとする」という悩みも抱えていました。これは、食後に高血糖が起こったあとに、遅れて大量に分泌したインスリンの影響によって低血糖が起こっている可能性を示します。
低血糖になったら運動どころではありません。パフォーマンスは明らかに低下します。また、血糖値が乱高下する状態は免疫細胞にも悪影響をもたらし、創傷治癒(そうしょうちゆ)を遅らせ、全身の機能を低下させる可能性もあります。つまり故障につながりやすく、リカバリーも悪くなります。
食後高血糖が良くないのは、アスリートだけではなく、一般の人すべてです。そこで、先ほどの図でも紹介した、彼が提唱している「ロカボ」では、このような食後高血糖を起こさないために、1食20~40gの糖質を1日3回と間食10g、合わせて1日70~130gの糖質を摂取し、カロリーやたんぱく質、脂質の摂取には制限を設けず満足するまで食べてください、と伝えています。
その一方で、その後の長友選手と加藤シェフとの取り組みの中では、糖質と同時にエネルギー摂取も少なくなってしまっていて、それが先ほど述べた体重の減少という問題を引き起こしていたのです。極端な糖質制限食をすることで生じるケトン体[注2]という物質は食欲を低下させる作用があるため、体重を減量させたい肥満者にとっては時にメリットにもなるのですが、体重を維持したいアスリートの食事法としては、極端な糖質制限食は不適切ということになります。また、そもそも、アスリートのエネルギー消費量は一般人とは格段に異なります。その意味では、ロカボという一般人向けの食事法とは異なる、個々のアスリートごとに設計した食事法が必要なことは明らかでした。
長友選手の場合は、特に運動量の非常に多いアスリートであり、まずは、体重を落とさないレベルで、血糖値の乱高下が起こらない範囲内の最適な糖質量を調べる必要がありました。そこで、「どの程度の糖質摂取で、どのくらい血糖値が上がるか」をモニターするために、24時間の血糖値を測定できる測定器(FreeStyleリブレ)を2週間装着してもらい、食後血糖値を含め、血糖値の推移を測り続けました。
その結果、長友選手は1食当たりの糖質量が40~60gの範囲内であれば、血糖値の上昇が140mg/dL未満に抑えられ、食後高血糖が生じないことが確認できたのです。
■パフォーマンスアップは食事法の変更による効果
加藤シェフがまだ長友選手の専属シェフになっていないとき、つまり筋肉のケガが多かった当時の長友選手は、パスタやごはんなどの糖質をたっぷり食事でとった後にデザートも食べていたそうです。朝食にメロンパンを食べて、おやつにクッキーを食べる、といったことも多かったとか。すごいですね、普通の人でもあまりやらないような食事。これはプロ意識がゼロといっても過言ではないのではないでしょうか。「糖質はエネルギーになる」(=カーボローディング)と解釈して、そういう食べ方をしていた、と話していたとは言いますが、それでも・・・という感じはします。(^^;
6月のトークショーで長友佑都さんと話す加藤超也シェフ
彼が専属シェフとなった当初も「食事、まだ?」とせかせかすることがあり、食事もかき込むようなときがあったそう。そして食後はすぐに眠くなるような状況だったそう。そこで、彼は「とり過ぎている糖質量を削ることによって脂肪をエネルギー源として活用できる体に変えたい」と考え、「1食当たり40g前後」と糖質量を定めました。しかし、「この糖質量でいいのか」という迷いがありました。
そんなこともあり、山田先生の指導が生きました。「糖質60gまではいい」というのが意外だったそうですが。ちなみに、「1食当たり40~60g」の糖質量とは、ごはん茶碗1杯ほどに相当します。そこで加藤シェフは、「糖質量を増やすと、脂質代謝が優位にならないのではないですか?」と質問しました。
すると山田先生は、「食後血糖の推移を見た上で判断しているので大丈夫です。長友選手の場合、この程度の糖質量であれば、脂質を利用できる体に変わっていきますよ。その代わり、脂質を燃やす体になるためには2~4週間かかります。その間、続けないといけないので、しっかり続けてください」とアドバイスをされました。さすがプロといった感じですね。
著書の中で長友選手は、「ファットアダプトを始めて1カ月もしないうちに、脳も筋肉も思い通りに働くようになってきた。集中力も途切れないし、カラダのキレもスピードも戻ってきた」と書かれています。
エネルギー摂取量がしっかりしつつ、血糖変動が安定したため、長友選手は前のようにせかせか食事を欲しがることもなくなり、「そろそろ食事か」というように余裕ができ、ゆったりと食事をするようになりました。食後の眠気も昼寝もなくなり、頭がクリアになり、ピッチの中でも外でも集中力が高まり、状況判断が良くなったそうです。すごいですね、糖質制限はやはり。
リカバリー力が高まり、すぐに疲れがとれる、さらには大学時代から悩まされていた顔や背中の吹き出物も一切出なくなったそうです。トレーニングは以前から誰よりもやってきた彼ですので、変えたのは食事だけ。パフォーマンスアップは明らかに食事法の変更による効果だ、とシェフは確信を持っています。
2015年のシーズンまでは筋肉系のケガが多く、ケガによる離脱も多く、インテル・ミラノの放出リストに載っている状況でした。しかし、食事法を転換した後は、筋肉系のケガは1回もなく、足もつらなくなったと本人も大満足しています。糖質を大幅にカットしていたときよりも体重は増えましたが、体脂肪は上がっておらず、筋肉量は3~4キロは増えたようです。
長友選手も、トークショーでは「たんぱく質と脂質は満足いくまでとることができるから、ストレスがない。加藤シェフが作ってくれるイスタンブールの新鮮な魚の料理が本当においしくて、外食したいと思わない。日々闘いの連続で緊張しているから、シェフの食事で精神が緩むんです」と話されていました。
「健康になるためには、粗食で我慢しなさい」と言われていたのがこれまでの食事法でした。しかし、これからは「おいしい」と「健康」が両立できる、ということが医学的エビデンスによって証明されてきています。
[注2]ケトン体とは、βヒドロキシ酪酸、アセトン、アセト酢酸の3つの総称で、人間の体のエネルギー源になる物質。ブドウ糖がとれない時間が長くなると、脳はブドウ糖の代わりにケトン体をエネルギー源として利用する。
糖質制限、最高ですね。
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